ゴルフのスイング方法や専門のトレーニングというのは計り知れないほど世に出回っています。ゴルフ専門のパフォーマンスコーチやパーソナルトレーニングがあるくらい、「ゴルフ」というのは奥が深いスポーツです。そして、かなり”メンタル”に左右されるトレーニングでもあります。その分、自分のフォームやトレーニングを見直したり、伸び悩んだりもすると思います。「自分に合ったトレーニングは何だろうか?」「自分はどのような振り方をすればよいのか、。」世に出回るトレーニングが多い分、迷走もしますよね。
そこで、この章では、物理と体の特性を踏まえて、人はどのようなスイングを行えばスイングスピードは向上するのかを解説させていただきます。物理と体の特性は誰でも当てはまることであり、「そうすれば理屈上はスイング速くなるよね」といった感じのことを紹介します。細かいフォーム指導でもなければ、とっておきのスイング方法を解説するわけではないので、「初心に帰りたい!」「スイングの根本をしりたい」という方は読んでみてください!
スイングスピードが速いとどうなるの?

スイングスピードが速いということはその分ボールの飛距離が伸びます。(飛ばした角度とインパクト面が同じ場合に限る)当たり前のことに思えますが一応これも物理に基づいて解説します。
飛距離が大きいということは、打ったボールに大きな運動エネルギーが伝わっているということです。
運動エネルギーというのは仕事をする能力です。仕事というのは力と移動距離をかけたものです。
運動エネルギー=仕事量

ゴルフで表すと、運動エネルギーの大きさは、1/2×クラブの重さ×スイング速度
スイングスピードが運動エネルギーであり、ボールの飛距離が仕事量です。
まとめると
スイングスピードがボールに力を伝え移動距離を決定づける要因ということです。
スイングスピード向上➀ 力を伝える距離の確保
スイングスピードを生むには”力積”というものが大事になってきます。
力積というのは決められた時間内に、体重当たりどれだけ力を加えたかということです。
スイングスピードの変化は式で表すと下のようになります。

この運動量の変化は力積と=の関係です。
つまり、
どれだけの時間どのくらいの力を加えたかでスイングスピードは決まるということです。
ということは、力を伝える時間を長くすれば、スイングスピードは速くなるということなので、力を加える時間を長くする方法を考えます。
時間を長くするには、力を伝える距離を伸ばす必要があります。
では、どこの距離を長くするのでしょうか。それは、バックスイング頂点からインパクトまでの距離になります。

では、上のスイングの距離を長くなるよう改善させるにどこをどうすればよいのでしょうか?
それは、胸椎の捻りが必要です。
胸椎の捻り

ゴルフスイングパフォーマンスの身体的
引用元
な決定要因:ユースゴルファーに対する
考慮事項
Physical Determinants of Golf Swing Performance: Considerations for Youth
Golfer
この写真のように胸椎の捻り(胸あたりの背骨の捻り)によってこのスイングの距離は確保できます。
よく言われる「腰を捻る」「腰を回す」とはこのような胸椎の捻りのことを表しているのです。中には実際に腰の骨(腰椎)を回すと思って頑張って捻っていた人もいるかもしれませんが、腰は本来捻りにくい作りをしているので腰を頑張って捻ろうとすると「椎間板ヘルニア」や腰の疾患などを起こす可能性があります。
まとめると
スイングスピードを上げるには、力を伝える距離が必要であり、力を伝える距離は胸椎のひねりによって生まれるということです。
言い換えると、胸椎が硬く、上手く体を捻れないと、力を伝える距離は確保できず、スイングスピードは向上しにくいということです。
力の伝える距離確保でやってはいけないこと
力を伝える距離を伸ばすとスイングスピードは上がるので、腕なども使って目一杯体を捻ってもよいのかとなるとそうでもありません。
これは物理的に考えると一見よくは思えるのですが、筋肉の特性を考えると腕を使って捻ることは良くはありません。

上の写真のように、腕を使って捻るということは、捻りを開放するスイングの反対方向に力が加わり、スイング場面にブレーキをかけてしまいます。上の写真でいうと、左大胸筋がブレーキの役割をしています。また、上半身を大きく動かすとその分上半身や骨盤のぶれが大きくなり、上手く体のひねりを解放できなくなってしまいます。他にも、腕でクラブを素早く振るということは、肩や肘への負担が大きく、上肢の傷害に繋がってしまうということです。
スイング時の体の捻りを開放する動作に、ブレーキが入ってしまうのと、スムーズに回旋動作が出来ない、傷害のリスクが高い、以上この3つから、腕を高く上げスイングの力を伝える距離を伸ばすようにすることはお勧めしません。オーバースイングとも言われたりしますね。
腕を高く上げるくらいであれば、胸椎の柔軟性を向上させた方がよいでしょう。
スイングスピード向上② 速い中での力発揮が必要!
スイングスピードを上げるには”力積”が重要。力積は、決められた時間の中でどれだけ力を伝えるかです。つまり、スイング時の距離の確保も重要ですが、同時に、伝える力も大きくしなけらばなりません。
これはただ、筋肉をつけて筋力を向上させればよいかというと、そういうわけではありません。
筋肉は動作速度が上がるにつれて、力の発揮できる率というものは低下します。これを力速度関係と言います。
スイングは徐々にスピードが早くなっていくので、力の発揮できる増加の割合は低下していきます。

つまり、速い動作の中でも発揮できる力の割合を低下させないためにする、上のグラフBのようにすることがスイングスピードを上げるためには必要なのです。Aはスイングスピードが増加すると同時に力の発揮率が落ちていきます。
速い動作の中の力発揮はその人の最大筋力に依存するわけではないので、それ専用のトレーニングを行わなければなりません。速い速度の中でも筋力を発揮するトレーニング”パワートレーニング”というものがあり、それを実践することをお勧めします。(内容は近日公開)
もし、この力速度関係をもう少し知りたい場合は下の記事で詳しく解説しています!↓
スイングスピード向上② 前足の壁を作る意味を物理的に解説
スイングをする際、よく前足で壁を作ると言われますがそれはどういったメリットがあるかご存じですか?
大きなメリットは、クラブのヘッド速度を最大限に高めることが出来るからです。”ムチ動作”言われたりします。
ムチを打つとき、握っている部分は素早く止めるとムチの末端部が最速になります。しかし、握っている部分を止めずに振りかざしてしまうと、末端部に力が伝わらず、末端部の速度は速くなりません。

これは、ゴルフのスイングでも同じです。前足で壁を作らず、体が流れてしまうと、クラブのヘッドの速度は向上しにくく、スイングスピード自体も上がりません。

このように、体をムチのように扱い、クラブのヘッド速度をより向上させるために前足で壁を作るようにするのです。
これが前足で壁を作る物理的根拠です。
スイングスピード向上③ スイングの軌道を一定にする
スイングを一定にするとインパクト時の正確性だけでなく、スイングスピードは高くなります。
これも当たり前のことなのですが、先ほど使った運動エネルギーを用いて解説します。

写真のように、クラブの軌道横幅が多いと、その分、運動エネルギーは使われてしまい、速度の増加はしにくくなります。スイングを極力一定にすると、運動エネルギーの分散が起きずらく、速度はスムーズに増加していき、スイングスピードは向上します。
つまり、スイングの軌道をぶらさないためには”体幹”が必要であり、もっと言えば、上半身だけでなく、下半身のぶれもなくす必要があります。そのため、体幹を鍛えるだけでなく、もも裏の筋肉(ハムストリングス)やふくらはぎの筋肉(腓腹筋)を鍛えることも重要になってくるでしょう。
まとめ
スイングスピードを向上させるには、「力を伝える距離を長くする」「速い動作の中での力発揮能力を大きくする」「体のムチ動作をスムーズに行う」「スイングの軌道の横のぶれをなくす」
物理や体の特性を踏まえて考えると、以上のことが重要になってきます。
その他にも、体重移動をスムーズに行えるには何をすればよいのかなど、考えられることはたくさんありますが、また、近日公開させていただきます!
次回は、今回紹介した要素を実際に向上させるトレーニングを解説させていただきます!

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